
愛犬の介護が始まって、飼い主さんが最も心をすり減らし、焦りを感じるのが「食事の時間」ではないでしょうか。
「昨日まではあんなに喜んで食べたものを、今日は見向きもしない」
「一口食べるごとにゲホゲホとむせてしまい、見ているのが辛い」
生きるために絶対に必要な「食事」だからこそ、食べてくれない時の絶望感や、
無理に食べさせて誤嚥(ごえん)させてしまうかもしれない恐怖は計り知れません。
「栄養のあるドッグフードを、なんとかして食べさせなきゃ……!」と必死になるあまり、お互いにとってご飯の時間が憂鬱になってしまっている飼い主さんも多いはずです。
私も試行錯誤で、色々なドッグフードを試しては失敗し、あれこれ買い込み過ぎて
気づくと開封したフードが冷蔵庫に一杯になっていて……!
毎回色々なフードを、祈る気持ちで愛犬の口元に運んでいました。
きっと同じような飼い主さん、たくさんいますよね?
でも、一旦、肩の力を抜いてみましょう。
老犬がご飯を食べないのは、ワガママでも食欲が完全に無くなったわけではないかもしれません。
「ただ食べる姿勢が辛くて飲み込みづらくなっているだけ」であったり、「今はドッグフードの気分じゃないだけ」というケースが非常に多いのです。
この記事では「老犬が食べやすくなる食事の姿勢」と、「ドッグフードへのこだわりを捨て、食べる喜びを取り戻すための考え方」をあらためて考えてみたいと思います。
食器の高さを変えるだけで食欲が戻る理由とは? いざという時に命を繋いでくれる切り札とは?
飼い主さんの焦りを手放し、愛犬が「美味しいね」と少しでも喜んでくれる温かい食事の時間を、今日から一緒に作っていきましょう!
床置きのお皿が危険な理由
若い頃は、床に置いたお皿からガツガツとご飯を食べるのが当たり前だったかもしれません。
しかし、シニア期に入り、足腰の筋力が落ちてきた老犬にとって、床まで頭を下げて食べる姿勢は想像以上に過酷であり、命に関わる危険も潜んでいます。
食道が曲がり「誤嚥」のリスクが跳ね上がる
犬は元々、人間と違って食べたものを重力で胃に送り込む体の構造をしています。
床まで深く首を下げる姿勢は、食道がグッと曲がってしまい、食べ物がスムーズに胃に落ちていきません。
その結果、途中でむせたり、気管に食べ物や水分が入ってしまう「誤嚥」を引き起こしやすくなります。老犬にとって誤嚥性肺炎は命を落とす直接の原因にもなり得る、非常に恐ろしいものです。
下を向いて食べる姿勢は、首や前脚への負担が大きい。
頭の重さを支えながら、弱った前脚でグッと踏ん張って立っている姿勢は、老犬にとって筋トレのような辛さがあります。
特にダックスフンドのような胴長短足の犬種は、首や腰への負担がさらに大きくなります。
「お腹は空いているのに、立って下を向くのがしんどくて食べるのをやめてしまう」というケースはとても多いのです。
これは飼い主さんが「食欲が落ちた」と勘違いしやすい場面です。
愛犬の食事の姿勢を楽にしてあげよう!
危険な床置きをやめて、愛犬を楽な姿勢で食事させてあげるには?
愛犬の口元までご飯を近づけてあげる食器台(フードボウルスタンド)を導入し、
お皿の位置を高くしたり、クッションをつかったりして、愛犬の食べやすい姿勢に変えてみましょう。
首を少し下げるだけで、自然な姿勢(床と首が平行になるくらいの高さ)で食べられるようになれば、誤嚥のリスクは激減します。
自力で立てない子はクッションなどで上半身を起こして(ポジショニングして)食器台を近づけてあげれば、食べやすさは格段に上がります。
我が家では、ポジショニングクッションの上にタオルを敷いたものに伏せの体勢にした愛犬を乗せ食器を近づけて食べさせていました。
そのうえで、お皿を傾けたり、スプーンを使ったり工夫していました。
例えば、このようなクッションで支えてあげると食事時の体制を保つことが出来、とても便利です。
どんな食器台を選べばいいの?あったら便利な機能は?
色々な食器台がありますが、こういうのが便利!というのをまとめてみました。
高さと「角度」の微調整ができること
老犬の体調は日替わりです。昨日はしっかり立てたのに、今日はよろけてしまうということも日常茶飯事です。そのため、高さだけでなく、食べやすいように手前に角度(傾斜)をつけられるものがベストです。角度がついていると、舌でフードをすくいやすくなり、首を深く曲げる必要がなくなります。
こちらの食器台は高さと角度が変えられ、木製で安定感があるものです。
もたれかかっても倒れない「安定性・重さ」があること
踏ん張る力が弱い老犬は、食べている最中に食器台に寄りかかってしまったり、前脚がぶつかってしまうことがあります。
その時に、プラスチック製の軽いスタンドだと、ガチャン!と倒れてしまい、その音に驚いて「ご飯=怖いもの」とトラウマになってしまう危険があります。
木製や陶器製など、ある程度どっしりとした重さがあるか、底面にしっかりとした滑り止めがついている「安定性」が必須条件です。
こちらのフードボウルはしっかりとした重量感がある陶器製で、滑り止めのシリコーンマットが付属しているため、食べている最中に器が逃げていきません。電子レンジ対応なので、フードを少し温めて香りを立たせたい時にも便利です。
こちらのル・クルーゼペットボールは人間用の鍋でもおなじみのブランドですが、ペット用も非常に優秀です。ストーンウェア(炻器)ならではのずっしりとした重みがあり、スタンドに乗せずにそのまま床やクッションの上に置いても安定感は抜群です。もちろん電子レンジにも対応しています。
ドッグフード(総合栄養食)へのこだわりを一度手放してみよう!
愛犬がご飯を食べなくなると、「栄養バランスが崩れてしまうのではないか」「なんとかして総合栄養食(いつものドッグフード)を食べさせなきゃ」と焦ってしまいがちです。
しかし、シニア期に入り、特に食欲が大きく落ちてきた段階では、そのこだわりを思い切って一度手放すことも大切です。
栄養バランスよりも「カロリー」と「水分」の確保を
健康な成犬であれば、すべての栄養素がバランスよく含まれたドッグフードを中心に与えるのが基本です。
しかし、老犬が食事を受け付けなくなった場合、数日単位でビタミンやミネラルが偏ることよりも、必要なカロリー(エネルギー)と水分が不足し、一気に体力を落としてしまうことの方が、身体への直接的なリスクが高くなります。
「いつものフードは吐き出してしまうけれど、茹でたお肉やサツマイモなら喜んで口にしてくれる」という状態であれば、まずは「カロリーを摂って体力を維持すること」を最優先に考えましょう。「何も食べない、飲まない」状態を避けることが、今の愛犬の命を繋ぐ一番のサポートになります。
「シニア用フード」の落とし穴
一般的な「シニア(高齢犬)用ドッグフード」の多くは、運動量が落ちた犬が肥満にならないよう、カロリーや脂質が低く抑えられています。
もし愛犬が徐々に痩せてきている、あるいは1回に食べられる量が極端に減っているにも関わらず、低カロリーなシニア用フードを与え続けていると、必要なエネルギーを十分に摂取できず、さらに衰弱を招いてしまう可能性があります。
食べる量が減った老犬には、少ない量でしっかりエネルギーを補給できる高カロリーなフードが必要です。
場合によっては、あえて栄養価の高いパピー(子犬)用フードや、シニア向けの高栄養流動食に切り替えることも有効な手段となります。
(※持病がある場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談してください)
シニア流動食には例えばこのようなものがあります。
「絶対にこれを食べさせなければいけない」というプレッシャーを手放し、「今日、この子が美味しく食べられるものは何だろう?」という視点に切り替えることで、飼い主さんの心も少し楽になるはずです。
いざという時の「切り札」となる食べ物の見つけ方
どうしても何も食べてくれない時、フードをお湯やレンジで人肌程度に温めて香りを立たせると
食べてくれることがあります。
また、嗜好性の高い茹でた鶏肉(ささみなど)やその茹で汁、さつまいもや、ヤギミルク、
犬用の甘酒などは多くの犬が喜ぶ食材です。
犬用ちゅーるやシニア犬の流動食も嗜好性が高く食べやすいでしょう。
【栄養満点でお腹に優しいヤギミルク】
ヤギミルクは牛乳よりも消化吸収が良く、お腹を壊しにくいのが特徴です。また、独特の良い香りが愛犬の嗅覚を刺激し、食欲をそそってくれます。
オススメはエスビラック犬用ヤギミルクパウダーです。
こちらは高品質なヤギミルクに、お腹の健康を保つ生きた乳酸菌(プロバイオティクス)などが配合されています。
粉末タイプなので、ぬるま湯で溶いてミルクとして与えるのはもちろん、いつものご飯にふりかけて香りをプラスするのにも便利です。
【「飲む点滴」として話題の犬用甘酒】
おすすめの甘酒は「こまちな 犬猫用甘酒」です。
秋田県産の米と米麹だけで作られた完全無添加の甘酒で、自然な優しい甘みがワンちゃんたちに大人気です。そのまま与えるのはもちろん、お湯で割って水分補給にしたり、ヤギミルクに少し混ぜてあげるなど、アレンジの幅も広がります。
ヤギミルクや甘酒、他にも色々あると思いますが、ペット用、無添加のものが安心です。
もしも人用甘酒を与える場合、「米麹」らつくられたもの、ノンアルコール、砂糖不使用のものを選んで少量与えてください。けれども不安な場合はやはりペット用を選びましょう!
フレーバーも色々あるので、是非、愛犬のお好みの味を見つけてあげてください!
しかし!もうそんなもの全部試した、もう手詰まり!とい日もありますよね?
そんな日の切り札として、『禁断の、普段はあげない愛犬の大好物』を愛犬が若い元気なうちから
探しておくとよいでしょう。
本当は犬には糖分が多かったり、ちょっと脂が多かったり、でもすごい食べたがるもの。
たとえば、カステラ、アイスクリーム、プリン、など甘いもの。
ケンタッキーやポテトなどジャンクフードなど。
(※これらは脂質や塩分が非常に多いため、あくまで『何も食べないよりは一口でも』という緊急事態の選択肢です)
それらを若いうちに、すこーしだけ(体に害無いくらいの少量)をあげてみる。
だいたい「これすごい好きだな」っていうもの、それぞれあると思います。
そんな大好物を見つけておいてください!
そんな大好物だったら、食べてくれるかもしれませんよね。
シニアになって、もう何も食べない、このままじゃ衰弱してしまうのでは?という状況で
その大好物が命を繋ぐ切り札となる場合があります!
もちろん、もともと犬に絶対NGのネギ類、ブドウ、チョコレート、キシリトールなどは省いてください。人間用の低カロリーのお菓子などには、キシリトールが使われていることもあるので、成分表を良くチェックしましょう。
持病のある子やアレルギーなどある場合もありますから、一度かかりつけの獣医さんに
相談してみるとよいでしょう。
我が家の場合は、イチゴ(これはダメなものじゃない、ただの大好物)ミルクプリン
アイスクリーム、いちご牛乳、カステラ、蒸しパン、バナナのパン お饅頭などなど……
それでもなお、今日は食べない!ってなっても何かしら見つけて試行錯誤しておりました。
最後の日は大好きなイチゴとミルクプリンを少しだけど、食べていました。
大好きな物食べられて良かった!と心から思いました。
食べさせ方の工夫
食事時、お皿からはもう食べられない場合、針のない注射器「シリンジ」を使った食事サポートが非常に役立ちます。
いわゆる「強制給餌」と呼ばれることもありますが、決して無理やり喉の奥に流し込むわけではありません。
自力で噛んだり舐めたりする力が弱ってしまった愛犬へ「安全に飲み込むためのお手伝い」をする感覚で行いましょう。
シリンジはこんな感じのものを、愛犬の大きさに合わせて選びましょう。
誤嚥を防ぎながら、安全にシリンジでご飯を食べてもらうためのポイントをいくつかご紹介します。
①フードは「なめらかなペースト状」に
シリンジを使う場合、少しでも固形物が残っていると先端に詰まり、押し出した反動で勢いよく口の中に噴射されてしまう危険があります。
ドライフードをふやかす、または手作り食を使う場合は、ぬるま湯を加えてミキサーで完全になめらかなポタージュ状になるまでしっかり攪拌してください。
市販のシニア向け流動食を活用するのも手軽で確実です。
温度は、香りが立ちやすく火傷の心配がない「人肌程度(ぬるま湯くらい)」がベストです。
シリンジに詰まらない「なめらかなペースト」を少量のフードから作るには、小回りの利くブレンダーが便利です。
【少量でも滑らかに仕上がるコンパクトブレンダー】
ビタントニオハンドブレンダーは、お鍋や小さなボウルに直接入れて「つぶす・混ぜる」ができるスティックタイプです。
1食分だけの少ない量でもしっかりとペースト状にでき、洗い物も少なく済むのが大きなメリットです。動作音も比較的静かなので、音に敏感なワンちゃんにも配慮できます。
こちらは、置いて上からプッシュするだけで簡単にペーストが作れるフードプロセッサー型の
「レコルト カプセルカッター ボンヌ」 です。
置いて使えるところが便利です。
機械に頼らない場合は小型のすり鉢でひたすらペースト状にするという方法もありますが、
私もやってみましたが、まあまあ疲れます……
けれど、すごく少量をすり潰す場合にはとても有効な方法です。
②「寝たまま」と「上向き」は絶対にNG!
人間と同じで、寝転がったまま飲み込むのは至難の業です。
必ずクッションなどを使って上半身を起こし、フセのような自然な姿勢を作ってあげてください。
そして一番の注意点は、「顎を上に向けて流し込まないこと」です。
上を向かせると気道が開き、食べ物が気管に入りやすくなります。顔の向きは床と平行か、少し下を向くくらいが安全です(飲み込めなかった分が自然に口の外へ落ちる姿勢)。
③口の横(犬歯の隙間)から少しずつ
真正面から喉の奥に向かって注入するのはNGです。
口の横側、犬歯の後ろの隙間からシリンジの先をそっと差し入れ、舌の上に少量を乗せてあげるイメージでゆっくり押し出します。
④必ず「ごっくん」を確認する!
一口分を口に入れたら、愛犬が舌を動かし、喉元が動いて「ごっくん」と飲み込んだことを必ず確認してから次の一口を与えましょう。
うまく飲み込めない時は、喉のあたりを優しくさすってあげると嚥下のスイッチが入りやすくなります。 途中でむせたり、嫌がって顔を背ける時は、無理をせず一旦ストップしてください。
食後もすぐにコロンと寝かせず、20〜30分ほどは上体を起こした姿勢をキープしてあげると、胃から逆流して吐き戻すのを防ぐことができます。
シリンジでのサポートは、初めはお互いに緊張するかもしれません。
しかし、コツを掴めば確実に栄養と水分を届けられる、愛犬と飼い主さん双方の大きな安心に繋がるスキルになります。
シリンジでもうまく食べてくれない時は?
シリンジであげようとしても、シリンジ自体を拒否する子もいますよね。
そんな場合、飼い主さんの指にペースト状のごはんをつけて直接食べさせると
安心して食べてくれるケースがあります。
注意点はシリンジでの給餌と同じです。ごはんはペースト状に、姿勢に注意して、お口の横から
指で頬の内側あたりにそっと入れてあげましょう。
口に入れる量も加減でき、我が家ではだいたいこの方法で食べさせていました。
まとめ 愛犬の食事を楽しい時間に!
いかがでしたか?老犬介護の場面では、愛犬の楽しい食事のはずが、飼い主さんの心の負担になってしまうことが少なくありません。
少しでもたくさん食べて欲しいという思いでいっぱいで、でも食べてくれなくて……
みなさん、それぞれ試行錯誤して色々な工夫をされていると思いますが、この記事の中に
何か困りごとのヒントを見つけて、愛犬の食事時間を笑顔で過ごせてもらえたら嬉しいです。
シニア犬ってとっても可愛いですよね。
日に日に愛しさがましてきますよね。できない事が増えて、お手伝いすることが増えても
愛情も比例して増えてくると思います。
そんな中で飼い主さんの日々の心や体の負担が少しでも軽くなることを祈っております。


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